2019年の発売開始よりコンスタンタントに4機種(2020年5月現在)をリリースする真空管エフェクターBeyond Tubeシリーズ。
でも全部魅力的でどれを買おうか迷ってて…というお声もよく耳にします。
そこで!ギタリスト・ベーシストそれぞれの目線から4機種の性能や特徴、オススメの使い方を徹底比較して行きます!
前回のギター編に引き続き今回はベース編でございます。
ギター編はこちら
ちなみにギター編とは半分くらい内容が一緒なのでギター編も読んで頂いた方には少し退屈かもしれませんがご了承下さい。
ギターには興味がないぜ!というベーシストの方はわざわざギター編を読まなくてもこちらだけで大丈夫なようにしてありますよ。
さて、4機種の比較の前にそもそもBeyond Tubeシリーズとは何か?というところからご紹介致しましょう。
Beyond Tubeシリーズとは元ソニーのエンジニアらによって立ち上げられた株式会社シングスによって生み出される真空管搭載エフェクターのシリーズ総称です。
一番初めにリリースされたBooster、そしてバッファとしての使用に特化したBuffer+、ギター用のPreampとそのベース版Bass Wiredとなっております。
あれっ4機種比較って言うけど実質3機種なのでは…?と思ったそこのあなた!鋭いですね…しかし今回の記事ではBass Wiredをギターに、ギター用Preampをベースに使用する場合も解説して行きますので本当に4機種を比較しますよ。
話を戻しましょう。Beyond Tubeシリーズは株式会社シングスによって生み出される真空管搭載エフェクターなわけですが、まず4機種に共通した仕様についてご紹介致します。
まず使用されている真空管はErectro-Harmonix社製の12AU7 EHです。
現在でも安定して生産されている数少ない真空管ですね。下手に希少なヴィンテージを使ったりするよりもよほど高い信頼感を得られるのではないでしょうか。
内部パーツは音響用コンデンサ、金属皮膜抵抗等の厳選されたハイグレードパーツを使用。
たかがパーツの細かい違いなんて…と思われるかもしれませんが、たかがパーツされどパーツです。
少しでも音質が劣化する可能性のある箇所を排除することでより一層”音質”への信頼感が高まります。
スイッチングはトゥルーバイパス仕様。エフェクトOFF時には余計な回路を通りません。
私はトゥルーバイパス信者ではないのでトゥルーバイパスが絶対正義だとは考えませんが、高品位なバッファを搭載した上で狙いを持って作っているエフェクターを除けば、やはりトゥルーバイパスというのは音質面では有利です。BeyondシリーズはエフェクトOFF時にはナチュラルで余計な味付けをしないサウンドを目指しているのが伺えますね。
あとは共通している仕様といえば見た目のデザインですね。
実は筐体のサイズは多少異なるのですが、いずれも真空管のそそり立つ個性的なデザインが特徴。
電源をONにすると真空管の下に仕込まれたLEDがピカッと光るのはかっこいいです。
さてさて、ここからは各機種ごとに詳細をご紹介しましょう
まずはBooster!
最初にリリースされ、Beyondの知名度を跳ね上げると共に確固たるブランドイメージを確立した名機でもあります。
ワンノブと真空管のみの潔い見た目が特徴。
ノブが一つしかないとなんだか漢のブースターって感じがしますね(個人的意見です)
しかし実は筐体を裏返して蓋を開けると内部トリマーが2つあり、ボリュームとトーンを調整できます。
出荷時のデフォルト状態ではボリュームは規定値、トーンは全開となっています。
正直なところこの二つはとりあえずは触らなくても大丈夫かなとは思いますが、ON-OFF時で音量の差が気になる場合や、高音が少しうるさく感じる時には色々探ってみると良いと思います。
また、BoosterのみDC9V-12Vでの駆動となっています。12Vではヘッドルームに余裕が生まれるため、少し大人しく上品なサウンドになりますね。
9V駆動の張り詰めた緊張感のあるサウンドもなかなか捨てがたいのでこれはもう完全にお好みです。
パワーサプライで使用する人は9Vでの駆動がメインになるかとは思いますが、是非12Vもお試し頂きたいところですね。
さて、オススメの使い方についてですが、本機は設計段階では真空管ギターアンプをさらに真空管でブーストしてあげようという趣旨の元開発されています。
しかしながら、実際にはJazz Chorus(JC120)を中心としたソリッドアンプでの使用で高い人気を誇っております。
そう、もうお分かりかとは思いますが、ギターアンプ以上にソリッドアンプが幅を利かすベースアンプの世界にもベストマッチなのです。
ベースアンプは高い出力を要求されるため、安価なモデルはほとんどと言っていいほどがソリッドアンプですね。
しかし、やはり真空管アンプの艶やかかつパワフルなサウンドに魅了される人も多いことでしょう。
そんな時はこのBeyond Tubeシリーズをアンプの前段に繋いであげるだけでまさしく真空管アンプのサウンドに肉薄します。
また、後述のBuffer+やBass Wiredと比較して本機Boosterが優れている点はその名の通り圧倒的なブースト力です。
アンプへの入力信号を大きくブーストさせることで、ヴィンテージのAmpegさながらのブリブリっとしたサウンドが現れるのです。
これはただ音量を大きくするだけの一般的なブースターでは難しいですね。やはり真空管の力は偉大です。
お次はBuffer+
Boosterの後継機種としてバッファとしての機能に特化しています。
Boosterと比べて筐体が一回り小さくなっています。(相変わらず真空管がそびえ立つので高さは変わりませんが)
他機種と比較して出力インピーダンスが大幅に低くなっており、バッファとして真空管で強化した信号をローインピーダンスで出力することを重視しているのが伺えます。
サイドにゲイン調節用のミニノブがついており、手前に回し切った状態ではユニティゲインとなります。
バッファとして使用する場合は手前に回し切った状態を基準とし、物足りない場合には徐々に奥に回していくと良いと思います。
個人的にはほんのちょっとだけ奥に回した状態が一番艶やかで美味しい音になると思うのですが、まあこの辺はお好みでどうぞ。
内部にはBooster同様にボリューム調整用の内部トリマーがあります。
基本的には初期値のままで大丈夫ですが、必要に応じて調整すると良いでしょう。
また、このBuffer+だけちょっと特殊なIN-OUTを備えております。
OUT端子とは別にTuner OUTという端子を備えており、実はエフェクトOFF時はこちらのTuner OUTから信号が出力されます。
ちょっとわかりづらい仕様なのですが、通常のエフェクターのようにOUT端子からエフェクトをON-OFFして使い分けることはできず、OUT端子からはあくまでもバッファーを通った信号だけが出力されます。
Tuner OUTはあくまでもチューナー使用時のミュート用と言うわけです。
オススメの使い方ですが、本機は基本的にはかけっぱなしを想定した仕様となっているため、コンパクトエフェクターをたくさん並べるスタイルの人はボードの最前段に配置することで真空管の暖かさとローインピーダンス変換の恩恵を受けることができます。Tuner OUTを活用することでチューナーの音質を気にする必要がなくなるのも嬉しいですね。
おそらくこれが一番王道の使い方になると思います。
また、当店でも高い人気を誇るのがやはりソリッドアンプ対策とライン対策です。
ソリッドアンプでは上述のBoosterと同様に真空管の艶やかさ、パワフルさを付与する形になりますが、ブーストせずにユニティゲインで出力することができるので歪み感を少なめにしたい場合や、アンプそのものの音をより生かしたい場合にはBuffer+を選択すると良いでしょう。
ライン対策のラインというのはみなさんがスマートフォンで活用している便利アプリのことではなく……自宅やライブハウスでDI(ダイレクトボックス)を使ってアンプを通さずにそのままの音を出すというものです。
ギターとは違い重低音を奏でるベースではこのライン出しを使うことも多く、ライブハウスでもベースアンプだけマイクを立てずにDIからそのままPAに…なんてことも多々あります。
このライン出しでは良くも悪くもソリッドアンプ以上に冷たい音になりがちですが、どうしてもこのサウンドをもう少し太く艶やかにしたいという場面があります。
そんな時はBuffer+を通してあげるだけでしっかりと真空管サウンドになります。基本的にはユニティゲインでの使用がオススメですが、サイドのゲインノブを若干回してあげるとより一層"真空管らしい"サウンドになるかもしれません。この辺は組み合わせる機材によるのでご自身で良い塩梅を探す旅に出て下さい。
さて、お次はみなさんお待ちかね!
PreAmpのベース仕様であるBass Wired!
他の3機種が無骨な無塗装を貫いていたのとは対照的に、Bass Wiredだけ色が塗られていますね。
決して派手な色ではないですが、やはり印象が変わります。
さて、こちらのBass Wiredですが、Booster・Buffer+の2機種がエレキギターでの使用を前提としていたのとは大きく変わり、完全にエレキベースでの使用を前提として開発されています。
大きな特徴としては中央のノブがマスターボリュームとなり、トータルの音量コントロールが容易になったことですね。
Booster・Buffer+や後述するギター用PreAmpではマスターボリュームのコントロールこそ出来るものの基板に直接マウントされた内部トリマーを使用しているためわざわざ筐体裏蓋を開ける必要があります。
また、3BandEQの帯域に関してもBass 65Hz, Middle 500kHz, Treble 4kHzとなっており、ベース用としてよく練られた仕様になっています。
Bassがやや低めの帯域になっているため、力強く抜けてくる低音というよりもそのさらに下のサウンドの根っこに当たる重低音をコントロールできます。
ちなみに、ゲインコントロールは裏蓋を開けると内部にトリマーがあります。
Bass Wiredではゲインはあまり小まめにいじるような仕様にはなっていませんが、自分にとってぴったりのポイントが見つかるまでは裏蓋を開けたまま試行錯誤の日々が続きそうですね。
オススメの使い方としてはやはり名前通り王道のプリアンプとして使うのが一番ベターではあると思います。
エフェクターボードの中心としてトータルのサウンドメイクの手助けになるかとは思います。
また、前述のBuffer+と同様の使い方もできます。
3BandEQとマスターボリュームによりサウンドの微調整がしやすいのは魅力的ですね。
Buffer+ほどの超ローインピーダンスではない点だけご留意下さい。
最後にご紹介しますはBeyond Tube PreAmp。
Bass Wiredではないギター用でございます。
ある意味ではベーシスト目線での本機のご紹介がこのブログの目玉と言っても過言ではないかもしれません。
一見するとBass Wiredと同じようなデザインですが、中身は似て非なるもの。
やはり大きな違いとしては中央のコントロールノブがボリュームではなくゲインであること、3BandEQの帯域や挙動の違いになります。
ちなみにマスターボリュームはBoosterやBuffer+と同様に内部トリマーとなっております。
即座にアクセスするのはやや難しいですね。
3BandEQもBass Wiredと比較するとややダイナミックかつアグレッシブなサウンドメイクを可能とします。
Bass Wiredが正しくプリアンプとしてサウンドの補正を重視しているのに対して、ギター用PreAmpは音を変化させるためのエフェクターという側面が強い様に感じますね。
オススメの使い方ですが、Bass WiredよりもどちらかというとBoosterに近い使い方が便利です。
Boosterほどではないものの、しっかりと真空管を使ったふくよかなブーストが可能であり、ソリッドアンプを力強く唸らせます。
また、3BandEQがついた事により特定の帯域をより強調してパワフルにするといった使い方も可能。
これはBoosterのパッシブトーンではできなかった事ですね。
本来の使い方からは少し逸れますが、ギター用だからと除外してしまうのは勿体無いポテンシャルを秘めています。
さて、長くなってしまいましたがそろそろまとめと行きましょう。
実際のシーン別のBeyond製品オススメは下記の通りです!
エフェクターとしてガツガツ音作りに使いたい → Booster、ギター用PreAmp
現在のサウンドはそのままに真空管の暖かさが欲しい → Buffer+、Bass Wired
Beyond単体で細かなサウンドメイクがしたい → Bass Wired
比較的Beyond製品はそれぞれのカバー範囲や使い方も重なり合っているところが大きいかとは思います。
それゆえに違いがよくわからず決めかねているというお話も多数お聞きます。
あくまで私の個人的見解であるということをあらかじめ断っておきますが、Beyond製品を選ぶ上で参考になれば幸いでございます。
実際には人によって求めるサウンドや組み合わせる機材が違うので一概には言えません。
もっと詳しい話が聞きたい!相談に乗って欲しい!などなどございましたらお気軽にご連絡お待ちしております🌟
矢島
- 2020.05.04 Monday