なぜThrobakなのか
まずはThrobakとは何なのかをざっくりと。
元々ハムバッカーピックアップの最高峰であるPAFの完全なるクローンを製作することで名を馳せたブランドであるThrobak。
そのこだわりは、Vintage当時のGibsonが使用していたワイアリングマシンと同モデルを使用することから始まり、ピックアップを構成する様々なパーツへの細部まで至ります。
できる限りVintageと同等のワイヤーやマグネットを使用することはもちろん、ピックアップのベースプレートやカバーなどの構成パーツも細かい所まで可能な限り再現を行っているプロダクトは、ヴィンテージクローンと呼ぶにふさわしい完成度。
残念ながら構成パーツは現在日本国内では単品販売していませんが、ピックアップカバーだけでも欲しいという問い合わせは非常に多いです。
実際、本国のサイトで確認すると米国国内では単品販売を行っているようです。
Throbakさん。日本国内でもぜひ単品販売を!!
そんな細部までこだわるThrobakが近年力を入れているのがシングルコイルのFender系モデル。
そして、もちろんこだわりはハムバッカーモデル同様シングルコイルモデルにも健在。
他のブランドではなかなか再現できていない部分まで再現されており、Vintageモデルの勉強にもってこいです。
今回はそんなモデル達を見ていきながらモデル毎の違いも見ていきましょう。
Fenderギターの元祖!Broadcasterモデル
1950年、Fenderは現在のTelecasterとほぼ同様のスペックをもつ2ピックアップモデルを発売します。
当初は1ピックアップモデルと同様のEsquire(エスクワイアー)という名称だったようですが、その後2ピックアップモデルはBroadcasterと名称が変更されます。
初めてフロントピックアップをもつモデルとして設計されたこのモデルのフロントピックアップはAWG#43(AWGはワイヤーの太さを表す規格)が使用され、出力の基準となる直流抵抗値は平均7kΩ台中盤〜後半。
リアピックアップは当初はフロント同様アルニコ5マグネットとAWG#43を使用して、直流抵抗値は9kΩ程度と非常にハイパワーなピックアップでした。
現在の他メーカーの50sオマージュモデルとされているモデルの多くが6kΩ中盤〜7kΩ前後に設定されている点を考えると、初期のモデルが非常に出力が大きいモデルだったことがわかります。
さて、それではThrobakのモデルを見てみましょう。
まずはネックから。
ThroBak/Broadcaster - A5 Custom MXV Pickups / Neck / Chrome Aged
使用しているマグネットはもちろんAWG#43のエナメルワイヤー。マグネットはアルニコ5を使用しています。
抵抗値は7.1kとデータよりも少し低めに設定されていますが、先述した通り現在のビンテージモデルとしては高めの出力となっています。
次にリアモデル。
ThroBak/Broadcaster - A5 Custom MXV Pickups / Bridge / Aged
フロント同様にAGG#43とアルニコ5を使用していることから、Broadcaster期の仕様であることがわかります。
特徴的な抵抗値はなんと9.9kΩ。
フロントとのキャラクター差は歴然ですね。また、今日の音楽シーンではこの差は逆にマッチしやすい可能性もあります。
なお、テレキャスターのリアピックアップは一貫してワイヤー保護のためのタコ糸(みたいなもの)が巻かれている点と、ワックスポッティングが施されている点が特徴です。
50年代前半はタコ糸を巻いた後黒鉛を多く含むワックスでポッティングが施されているため真っ黒にタコ糸が染まっているのが特徴。
throbakを見てみると、、、
リード線の根元が黒く染まっているのがわかりますか?
見た目だけ黒くなるように元々黒いタコ糸を巻くこともある部分ですが、throbakでは巻いた後のポッティングで染まってますよ、しかもビンテージ同様の構成でという意図がここから見て取れます。
うーむ、凄いこだわり。。。
Telecaterの誕生!!
Broadcasterの名称が他社のモデル名と同名だったため、一時モデル名の記載のないモデル(通称ノーキャスター)を経て1951年中期についにTelecasterという名称のモデルが誕生します。
この時期のピックアップは基本的にはBroadcaster期を踏襲していますが、リアピックアップはワイヤーがAWG#42へ、マグネットがアルニコ3へ変更になります。
ワイヤーが太く、マグネットも磁力が弱いものへ変更されたことで抵抗値は一気に7kΩ前半まで落ち、これがよりチャンキーなブライトサウンドを導くことになりました。
現在多くのビンテージモデルで聞かれる、少し非力に聞こえるいわゆる『ブラックガードの枯れたサウンド』はこの頃をイメージしたサウンドになります。
さてthrobakではこの時期のモデルはT-54というモデルが対応します。
1951年からのモデルというよりは、1955以前というスタンスでしょうか。
ThroBak/T-54 MXV- ThroBak Tele Guitar Pickup / Neck / Aged Crome
Brodacaster同様ワイヤーはAGW#43、マグネットはアルニコ5を使用していますが、抵抗値は6.8kΩと少し出力が低めに設定されています。
おそらく巻き数で差をつけてあり、リアのブライトなサウンドとマッチングをとった仕様となっているということでしょう。
リアモデルは、
ThroBak/T-54 MXV- ThroBak Tele Guitar Pickup / Bridge / Aged
ワイヤーはデータと同様AWG#42となっていますが、マグネットはアルニコ5を使用。
恐らく、歴史上の忠実さよりもアルニコ5が持つワイドレンジな音楽的利点を優先した結果でしょう。
しかしながら抵抗値は6.6kΩとBroadcasterモデルは雲泥の差。
フロントよりも低い出力設定で、ブライトな枯れたサウンドを演出します。
なお、この時期まではリアポジションのポールピースは段差のないフラット仕様。
また、Broadcaster同様後ポッティングによるタコ糸の染まりも見られます。
後編へ続く
いかがでしょうか。
前編だけですごい情報量。ついて来れてますか。
細かい部分ではもっと様々な考察点があるヴィンテージピックアップですが、ざっくりの説明でもこれだけの違いがあります。
もちろんメーカーはそれらを一つ一つ紐解きながら、なおかつブランド毎のこだわりを詰め込んで来ています。
違いがわかれば、より自分にあったモデルが見つかるはずです。
後編では残りの2モデルをご紹介!!
商品ページにないモデルでも、取り寄せにて承りますのでお問い合わせください!!
- 2021.05.05 Wednesday