ビルダー 伊集院 香崇尊 氏が、神奈川県 逗子市に工房を構えるハンドメイド・ギター Kz Guitar Works。
2007年から2010年には、あのQUEENのギタリスト、ブライアン・メイの愛器「レッド・スペシャル」のオフィシャルシグネチャーモデル「Brian May Super」を手がけたビルダーとしても知られています。現在はRed Specialから派生したオリジナルモデルも展開し、国内外問わず多くのギタリストに愛用されています。
今回、Kz Guitar/伊集院さんに「RS Replicaをエイジド加工するというのはどうですか?」とリクエストさせていただきました。しかしながら、これまでKz Guitar Worksの製品でエイジド加工というものが存在せず、如何にフィニッシュを美しく仕上げるかという努力もされてきたブランドですので、回答は「ちょっと考えさせてください」との事でした。
もちろん手間とコストという点がありますが、技術的に初のエイジド加工ということですから、伊集院さんはもちろんブライアン・メイ/QUEENファンが納得できるクオリティーの仕上げが可能なのかと言う点が最大の問題でした。やってみないとわからない、、、、という状態からのスタートでしたが、伊集院さんのブライアン・メイ 愛が見事に結実し今回の発売へと繋がりました。
ブライアン・メイのギター/レッド スペシャルといえば、彼が10代の時に父親と共に製作した自作のオリジナルギターだという事はファンでなくとも有名な話ですね。木材には家具や暖炉の古材を使用し、シェイプや構造、パーツ(P.Uからトレモロユニットのバネまで!!)に至るまで完全なオリジナル設計。超有名バンドのトップ・ギタリストが子供の頃に親子で自作したギターを50年以上にわたりメインで使い続けているという映画や漫画のような話。ロマンしかありません。
そんなオリジナルのレッドスペシャルは1998年にブライアン・メイのサウンドを知り尽くす Greg Fryer(グレッグ・フライヤー)の手によってフルレストア(再塗装を含め)が行われました。ですから「それ以前で最も象徴的な時期のギターを再現したい」となると、、、、やはり1985年の Live Aid!!
ファンでなくともあの大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』のクライマックスシーンとしても記憶に残る、あの時期のRed SpecialをKz Guitar Works が様々な資料から見事に再現。では完成した一本を見て参りましょう。
Kz Guitar Works / Kz RS Replica 1985 Aged Limited
SPEC
Body: Blockboard, Oak, Mahogany Veneer
Neck: Mahogany (Quartersawn)
Scale Length: 610mm (24-inch)
Fretboard: Oak (Black-painted), 7-1/4 inch R
Body Depth: 40mm
Neck Grip: Original BM Style Thick Fat Grip
Nut: Graph Tech TREM-NUT
Fret: Jescar FW55090
Pickups: KGW T-S
Bridge: Original BM Style Bridge
Tremolo Unit: Original BM Style Tremolo Unit
Control Knobs: Original BM Style Control Knobs
Machine Heads: Schaller Lock
Controls: Volume x 1, Tone x 1
Switches: On-Off x 3, Phase x 3
Color: Original Red Mahogany
おなじみの極太のネックに直列接続された3つのピックアップは、オン/オフとフェイズ切り替えの組み合わせで、13通りのサウンドバリエーションが得られます。一般的なギター用材ではなく本人同様ボディーには集積材を使用。ボディサイドに直交して入る木目がその証です。外見はもちろん、ピックアップの位置も正確に本人の実機から計測し、驚くべきことにブリッジのコマ位置まで本人のものと同様に設定されて出荷されるこだわりよう。取り外されたフロントP.Uのヨークが生み出すサウンドの特徴や、オリジナルではヴィンテージのバイクのパーツから流用していたトレモロ・スプリングは張力まで実機と同じものを製作し使用しています。
そして、今回最大の目玉であるエイジド加工。資料を読み漁り、傷の位置や雰囲気も完全再現。ボディートップ&バックの特徴的なエイジングはもちろん、エボニー見える指板が実はホワイトオークに塗装が施されているというのがよくわかりますね。また有名なイギリスの6ペンス硬貨をピックに使用しているという特徴も指板エンドやP.Uカバーの傷から想像できるほどのリアリティー!!
ピックガードのコントロール上部に貼られた黒いテープ。こちらは一時期ブライアンがファズを内蔵していた時に開けられた穴を塞いでいたものを再現(レストア後は星型のインレイで塞がれています)。ちなみにただの黒いシールではなく、何種類ものテープを取り寄せて最も質感の近いものをチョイス。アームバーのキャップも今回のエイジド仕様ために用意されたものです。
通常モデルですとペグにはGotohを採用していますが、今回は85年当時に搭載されていたSchallerをチョイス。当時はロック式のペグ自体が存在していませんが、プレイアビリティを考慮してロック式を採用しています。
形だけを再現したモデルも販売されていますが、ブラインアン・メイ 本人やグレッグ・フライヤーも認めるクオリティー。本物を知るKz Guitarによる真のレプリカです。
Kz Guitar/伊集院 氏が直接納品にいらっしゃいました。
やはり今回のエイジド加工は技術的にも精神的にも大変だったようで「もうやりたくないですね(笑)」ということでした。さらに様々なお話を伺いましたが、非常にマニアックな逸話の多いこのギターの話は尽きません。
画像のこちらの個体はすでにSold Outとなりましたが、もう一本のみ次回生産が確定しております。
この後の生産は現時点で未定ですが、気になる方はダメ元でお問い合わせください(笑)
さらに、、、、、これに続くユニークな企画が進行中。
May Starインレイ
ノンボルトのネックジョイント。
この画像で分かったら超マニアです。
乞うご期待。
- 2021.10.21 Thursday