英国のNeveに対抗すべく、1969年アメリカで創業されたプロ音響機器メーカーAPI社。
HA、EQなどのモジュールは勿論、その複合たるコンソールまでほぼ全ての製品の心臓部に自社製ディスクリートオペアンプ"2520 amplifier"を搭載。
API製品は'70年代から現在に至るまで全米で広く普及し、その象徴とも言える"2520"の4桁は、
「ブライトで音像に芯がありタイト」というアメリカンサウンドのイメージそのものを作り上げたという由緒ある伝統を持ちます。
オペアンプと言えば、4558等のICタイプのイメージが一般的でしょう。
しかしながら、API製品のみならず、
ヴィンテージギターが買えてしまう程の超高級オーディオ用プリアンプにも搭載される2520は、
フルディスクリートで構成されるため巨大なサイズを誇り、ディスクリート故に細部まで洗練され、
入力された原音を一部の隙もなく正確に捉え、揺るがない存在感を持つ音像を出力します。
ロックは勿論、ジャズやクラシックまであらゆるジャンルに使用され、
あらゆる音楽的なシーンにおいてヒトの耳にとって理想的なサウンドを提供する、
歴史と伝統あるまさしく音響専用のオペアンプです。
そんな伝説のオペアンプに最大限のリスペクトを表し、何とペダルの中に再現するというクレイジーなコンセプトの本製品。
しかも、未だ現役の2520ですが、オーガニックで程よく太いサウンドのヴィンテージ2520を表現。
潔いシンプルなGainの1ノブスタイルは、珍しいスクウェアなLEDとのルックスも相まって、
スタジオ定番マイクプリ/DIの"512C"を彷彿とさせます。
ボディサイドのスイッチはpadスイッチ、ではなくinput trimスイッチ。
ONにするとアクティブベースやライン入力を受け付ける際にクリッピングを防ぎ、適切なGainのかかり具合を担保するのと共に、
パッシブのギターやベースを入力をする際には低域に重心が出るという不思議なトーンスイッチにもなっています。
マスターボリュームを兼ねた極上のGain回路にて全てのサウンドがコントロールされますので、
使い勝手自体は実機のpadスイッチ通りです。
そして出力には通常のアンバランス出力(フォーンジャック)以外にもバランスアウト(XLRジャック)を搭載。勿論、パラレル出力。
肝心なサウンドですが、バランスアウトの際は伝説通りのサウンド。
原音の持つレンジ、ダイナミクスと言った音響的な情報はもとより、表情や色合いといった奏者のパッションまでも正確にキャッチ。
後者に関してはライン入力でリズム物や声を通すと非常に良く分かります。
特にレンジに関しては最近の原音忠実系のハイファイ系エフェクターと比べても違いが一目瞭然。
エフェクター的な2次元的な広さを飛び出し、音の立体的な出方を特徴とし、
例えば、1本のストラトキャスターの持つ音の太さに驚かされます。
低域が出ていると言う訳ではなく、6弦の持つ本来の情報量の中に立体的なボトムの鳴り方が含まれ、
それが正確に出力されることで、弦の振動が立体的に感じ取られ、私たちに音楽的な"太さ"を教えてくれます。
本機をDIに使用されるベーシスト以外にも、ギタリストでも是非XLRアウトからの信号をヘッドホンでモニターし、この意味を感じ取って頂きたいのであえて6弦と表記させて頂きました。
一般的に、タイトなボトムの締まりが有名で、芯が立ち音が抜けて来るのがAPIの特徴とされますが、
上記の"太さ"も含有した上で低域を締め、サウンドを引き立たせてくれるのです。
この不思議な太さはヴィンテージ2520特有の質感をうまく表現しています。
そして、本機の真骨頂、実機では不可能なアンバランス出力からアンプへの接続時ですが、
絶対にその他のブースターやバッファーとキャラクターが被らないことを断言出来ます。
何度も言いますが、製品として生まれてきた存在理由自体が違うからです。
全体域の情報量が十分に包み込まれ、それでいて耳にはタイトで抜けたサウンド。
音が立ち、輪郭が明確に再生され、細くならずにシャープに研ぎすまされ音像は前へ。
しかし重心は落ち着いて鎮座し、ボトムの存在感は感じられる…
Gainを上げて行くと上記の傾向が際立ち、2520の特徴がより強く出てきます。
オーバードライブやゲインブースターの様な"歪み"ではなく、
原音はそのままに、至高の増幅回路により音像が際立つ"ドライブ感"が出てきます。
基音の音像はゆがまず、倍音のみに躍動感あるいは疾走感が付与され、
煌びやかに伸びて行くサウンドに酔いしれ、ついつい値を上げて行きたくなりますが、
大元はPA機器用の増幅率を誇りますので、アンプ側が過大入力に耐えきれずに歪んでしまうかもしれません。
その時の歪み感もその他のペダルとは異なり独特で唯一無二なのですが、
アンプ側のLowインピーダンスインプットを利用したり前述のinput trimスイッチをONにする等で、
このドライブ感を効かせたセッティングを狙いやすくしているのは、ペダルスタイルならでは。
過激な音の変化がある訳では全くありませんが、
とにかく通しただけでサウンドの存在感が変化するのが誰が聞いても明らかです。
しかし、サウンドの情報が偽られる訳では無いので、聞き手、あるいはプレイバック時には自然すぎて、
ペダルを通した音だとは全く感じられません。
ギタリストに嫌われる良くあるサウンドの色付けでは無く、この存在感そのものが2520特有の性質であり、
現在に至るまであらゆる音楽シーンで数多のエンジニア達を唸らせてきたサウンドなのではないでしょうか。
こういった機器こそ、"エフェクター"として楽器とアンプの間に割って入る存在なのかもしれません。
楽器フェア2014 当店ブースにて先行展示!
発売は年内を予定。